11月29日、弁護士の伊須慎一郎さんを講師に招いて、「若者の労働問題」をテーマに学習会を行いました。ブラック企業・ブラックバイトの不正の具体的な事例から、労働者が取りうる対抗策まで、私たちが働くうえで基礎となる労働者の権利を中心に、分かりやすく話していただきました。
○ブラック企業・ブラックバイト
ブラック企業とは、「働く労働者を使い潰す会社」のこと。雇用関係では、どうしても使用者の方が有利になるため、労働者を守るための多くの決まりがありますが、ブラック企業と呼ばれる職場では、それらを無視して個人を壊すような働かせ方をさせます。月140時間の残業の末、自分の仕事に疑問を感じフェリーから投身自殺した例や、一部では暴力が日常的になっている飲食業界の例などを紹介してくれました。
会社が労働者を雇う場合、「雇用契約」を結ぶのが普通です。しかし最近は、雇用契約ではなく委託、請負契約を結ばせるところも増えているといいます。雇用契約であれば労使間に従属性がありますが、委託、請負契約の場合、労働者は個人事業主として扱われることになります。しかし、そこには従属性がはっきりと認められることが普通です。そこで、契約書のタイトルは「請負」となっていても実際には従属性が認められる場合、それは雇用契約だと認定されます。日本の産廃処理業者で働くあるイラン人は、請負契約にさせられていたために労災がおりなかった。しかし、裁判所はその職場に従属性を認め、その働かせ方を違法だと判断しました。
さらに最近ますます深刻化している問題として、ブラックバイトの話をされました。今、安倍自公政権は非正規の割合を拡大し、労働者をさらに弱い立場に追い込むような政策を続けています。本来、雇用者は、労働者を使用する立場として、労働者の権利を守る必要があります。しかし、その責任を放棄させ、国も労働者を守る権利を放棄し、全てを労働者の自己責任に押し付ける風潮は、労働者の成長を阻害し、結局は経済にも悪影響を与えかねません。
○労働組合をつくる、身を守る
今、日本の労働組合の組織率は16.7%です。労使関係ではどうしても雇う側である使用者の方が力を持ってしまうめ、使用者に対して自分たちの権利を主張するために、まずは同じ立場に置かれているもの同士、力を合わせることが重要になってきます。労働組合が力を持っている国として、フランスの例を話してくれました。フランスでは、組合組織率は3%-4%だそうですが、社内組合ではなく産別組合が結成されていることにくわえ、組合が協定を結ぶと未加入の労働者にも影響が出るようになっています。労働者の権利を守るために一定の力を保っているのです。
ブラックな働かせ方をさせられないために、もっとも大事なことは何か。まずは、労働条件をしっかり確認すること。高校の非常勤講師で派遣として働いていたある方は、年間180万円を給料として受け取っていましたが、学校側は360万円支払っていたことを、学校側から指摘されるまで知らなかったということもあったそうです。さらに、ブラックの疑いがある場合は、タイムカードや上司とのやりとりなどを記録して残しておくことも有効です。もし労基署や裁判所に訴えることになった場合、証拠があることで、主張の正当性を認めさせやすくなります。
このように、働く私たちが、自らの権利を主張して守っていくことが、お互いに暮らしやすい社会をつくることにもつながっていきます。多くの弁護士事務所が、初回の相談は無料などの措置をとっています。また、一人でも入れる労働組合として埼玉ユニオン(SU)が活動しています。ちょっとでもおかしいなと感じることがあれば、すぐに相談してみましょう。
(南部地区青年支部ニュースより).