カジノ法案が、衆議院の内閣委員会で強行可決された。まともな審議をせず採決に踏み切ったのは、その本質を知られたくないという提出者・賛同者(自民・維新)の意図が働いていると推認する。
ところでこの法律(「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、現在は「法律案」)について、自民党は「統合リゾート(IR)推進法」という略称を使いたがっているようだが、新聞は「カジノ法」「カジノ解禁法」と呼んでいる。これは大変結構なことだ。「統合リゾート推進法」では既存の「リゾート法」(「総合保養地域整備法」)と紛らわしい。今回の法案は、カジノを解禁するところにその最大の特徴があるのだから、「カジノ法」が最適な略称だ。
(追記:NHKは「IR法」と呼び始めた。安倍政権への配慮といったところか。)
翻って、「戦争法」である。正式名を「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」と「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」という、大変長い名前の二つ法律をまとめて呼んだ略称である。
公明党あたりから「戦争法という法律はない」という言いがかりをしばしば頂くが、略称なのだから正式名称と異なるのは当然である。実際、公明や自民が呼ぶ「平和安全法制」というのも略称に過ぎず、そういう名称の法律はない。問題は、どちらの略称が、法律の「本質」をより体現しているか、だ。
「平和と安全を守る」ことを理由(口実)にする法律はいくつかあって、「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」(重要影響事態法)、「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(事態対処法)など、いずれも「平和」「安全」という言葉が入っている(「戦争法」は、これらの改正をその内容に含む)。「平和安全法制」という略称では、これらの法律と紛らわしい。「戦争法」(平和安全法制)の特徴は、「日本が攻められなくても他国を攻撃することができる」「交戦中の米軍の兵站を担う」ところにあるのだから、まさに「戦争法」という略称が、その本質を体現していて的確なのだ。
「戦争法」と呼ばれたくないのであれば、その法律を廃止するしかない。「そういう名称の法律はない」などと、本質から目を逸らさせようとする言いがかりはみっともない。